
中野京子 角川書店
フェルゼン大好き~な中野先生が、絵画に描かれている
男性ファッションについて、語られているこちらの御本。
軽快な語り口で、1点についての解説分量はコンパクト。
なので全体、さくさくと流れるように読めました。
※ベルばら直結話は無し
『チャタートンの死』 ヘンリー・ウォリス

描かれているのは17歳で砒素を煽った詩人さんの姿。
亡くなった詩人が実際に住んでいた現場をスケッチし、同じように売れない詩人を
探してきてモデルとしてポーズをとらせ描いたのだそうです。
おかげで、こちらは画家ウォリスの代表作に。
けれどその2年後、なんとモデルをした詩人の、その妻を奪って駆け落ちしたのだとか。
(ちょっとひどいんじゃないでしょうか

もちろんこちらの御本、マジメに解説されてありますが、頁が進むにつれ
所々じ~わじわくる面白さが滲み出ています。
大笑いとは違う、じわじわ加減


美脚には赤 『フランス王ルイ十四世の肖像』

”当時、靴の縁やヒールに赤い色を使えるのは宮廷貴族だけだった。
要するに靴に差す赤は、特権の証なのだ。
ぐいとこちらへ出して見せつけているのも納得できよう”
という十四世陛下の解説の次にきたのが
太陽王には負けたくない 『芝居の衣装をつけた皇帝レオポルト1世』
デーハーな羽飾りの御仁は、マリア・テレジア女帝の祖父さまでした。
時代はバロック。王侯貴族は男が女よりも華麗に装っていた頃。
こちらは結婚式を記念しての肖像画らしいのですが、中野先生によるコメントが
“太陽王とは正反対の、このノーテンキなコスプレ”

ぶほ


けどこちら様 “君主としては、賢明にして強運の皇帝であった” そうです。
勿論本書はこういうノリだけではなく、”当時の靴は左右同じ形だったので
太陽王ばかりかアントワネットも、靴に足を合わせていた” とか
フランス革命勃発の折、王室警護にはスイス人傭兵もいましたが
当時各国にいた、この傭兵を職業としていた人達についても
”様々な国の貨幣を持って帰国したため、それがスイスの銀行業を
発展させる元となった” などという御話もあり、さり気にマメ知識が
散りばめられた御本でございました。
中野先生、いつもゆかいな解説をありがとうございます

