漫画では、ぷんすか 噴火していたオスカルさん。
アニメでは静かに憂いていました。。。


"ジャンヌ・バロア回想録第一巻
マリー・アントワネットスキャンダル伝その1、王妃の恋人たちの目録"
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「 出てる出てる
 男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ大佐
 ポリニャック夫人の次に出てるぜ
 ジャンヌ・バロア。ほんとうにやるもんだな 」
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「 私の事などどうでもよい
 問題はその内容を信じ込む民衆の気持ちだ
 王室に、そしてマリー・アントワネットさまに対する… 」
(第24話 アデュウ わたしの青春)


このような公で認められない出版物は"禁書・悪書"として
厳重な取り締まりにあっていましたが、出版業界内での
権利不平等や確執、税制など様々な影響もあり、意外な事に
禁書の類は国外で印刷・密輸されていたものが多かったようです。

という事でこちら、図書で借りた禁書に関する本が面白かったので
結局、購入し再読していました 。


    革命前夜の地下出版   
 ロバート・ダーントン  岩波書店

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いつの時代であろうとも、貧民街から猥褻話を拾い出せないときはない。
しかしルイ十六世の治世には、これがあふれかえっていた。(一部略)
そしてこの洪水は、警視総監J・C・P・ルノワールを悩ませた。
「パリっ子というものは、政府の命令や許可によって印刷され、公にされた事実よりも
こっそり出回る誹謗文書や悪意に満ちた噂のほうを信じる傾向がある」からであった。

オスカルさんが衛兵隊をひきいて 市中をまわっていた頃
弁護士や文筆業(作家)志望者が、パリには大量に溢れていました。
しかし、それを専門として生計をたてられた人は、ほんの僅かでしかなく
まともな仕事に就けず、そのまま底辺の生活へと転がり落ちた人々が
批判や中傷文を書く作業を請け負ったり、噂話のパンフレット作家などに
なっていた面があるというお話。
自分自身の無能力さは考えず、思うようにパリで認められなかったこと
その恨み妬みの心が、批判や中傷文へと転化していた部分もあった様です。


「ある下劣な宮廷人は、こうした悪い評判を韻をふんだ二行詩に作り
従僕の手を通じて中央市場まで配布させる。
市場から噂は職人のところに届き、職人はそれを殿方のところへお届けするが
この殿方こそ、この詩を最初に書いた張本人なのだった」

ストレートに下品過ぎて、その「悪い評判」文はここに記せませんが
宮廷に伺候している貴族が、王室の評判を落とさせる悪口(誹謗中傷)
従僕に指示してパリ市中でばらまき、それが一般へ広まり、自分の元へ
印刷物として形を変えて戻ってきたものを「もう読みましたか?」
「今パリに出回っていますよ」と宮廷へ持ち込む。などという方法が
実際に取られていました。
きったなーい! 手の込んだ、でっち上げですネ。
アニメの回想録発行はこの変形バージョン的で、そう深く考えてませんでしたが
嘘を作っている自分の存在を誤魔化すというのは、汚さ倍増な手法ですね。
ヤダわわわわ~。


「情報屋」と呼ばれた専門家が、パリの特定の場所----たとえばパレ・ロワイヤル
公園の「クラクフの木」の下のような所に集まって「ニュース」を交換した。
こうしたゴシップが書きものになって「手書き新聞」が作られ、これが印刷されると
「スキャンダル情報」となる。
これは、昔風の噂の呼び売りと、大衆ジャーナリズムとの中間にあたるものである。

この時代、正規の報道紙というものはなかったので、同じ非合法だとしても
ベルナールなどは活動家でもありましたから、こういう情報屋系ではなく
政治パンフレットの書き手という感じの位置づけになりますかネ?


とここまで記した(本文から拾った)一文は、ほんの部分でしかなく
こちらの本では、書籍やパンフレットの内容そのものよりも、禁書制作に関わる人々
執筆・発行・印刷・運送・小売、という業種の様子が描かれて部分が多いです。

なんとか本を出してもらおうと、自分を売り込む執筆家がいる一方
自称作家の売り込みなど歯牙にもかけない出版社が、差し入れの獣肉に騙され
詐欺師相手に支払いのないまま何年も、出版物を提供し続けたあげく
代金を踏み倒された  などという、様々な悲喜こもごももあり。

また他には、遠路旅をして出稼ぎ労働者のように印刷業務に携わる人々や
山越えをする密輸業者の記録もあり、まるで何か小説の一部のようでもありましたが
こちらに収められているのは実際の動き、出来事なのでした。

当時の詳細が分かる書類や手紙(=古文書)が、今まで大量に残っていたという事
それ自体凄いな~と思いますが、それをライフワークとして長い時間をかけ
読み解いた著者さんが一番凄いのでしょうね~~ あっぱれ