1789年 オスカルさんが没した、その九年後
1798年 ジュール・ミシュレ氏、パリに誕生。


michelet

  フランス史 5 -18世紀 ヴェルサイユの時代- 
     ジュール・ミシュレ 藤原書店 

歴史書はたくさんありますが、こちらに惹かれたのは
著者さんがフランス革命終結期に生まれた人だったから。
生きた時代がより革命期に近いという事は
もっている感覚・視点も当時の人に近いと思うのですが
どうでしょネ?
著作としては古い時代のものですが、本書は2011年刊という
新しめの訳書で読みやすかったです。


心はそこにはなかった。
ルイ十六世の心は聖職者や貴族に対して、根底において何も変わらず
終始彼らに忠実だった。
~略~
何たる酷い忘恩!
国民のたゆまない愛情をこれほど彼が反故にするとは、まったく驚きである。
フランス以外の国ならばどこであろうと、テュルゴーやネッケルを
更迭したとあれば、彼は民衆から嫌われていたはずだ。
~略~
しかしどうもならなかった。
諸悪の根源は他にあり、毎日署名をしている事柄を国王はご存じでない
-----民衆は、この驚くべき作り話に夢中になってしまった。
~略~
フランスは熱烈な王党派であった。例外などない。
誰もかれも、あのロベスピエールやマラーでさえも。

という具合に、どこか小説的な歴史書で、全6巻のうち
こちら第5巻はルイ14世末期から革命前夜まで。

このフランス史シリーズとはまた別に、同じ出版社から同著者の
"フランス革命史"が出ていて、そちらがこの第5巻から続く内容に
なっているようです。
私、ギロチンがんがん な辺りが好きじゃないので
革命関連本はあまり手にしませんが、そんな自分でも読もうかな、と
思わせてくれるものが、ミシュレの筆からは伝わってきました。


本書は抄訳という事で、要約や解説が繋ぎとして入っているのですが
そちらから、ベルばら的ポイントを少々ピックアップ

王妃は自分の周辺に愛する者たちを置いていた。
子供のようなランバル嬢、男のようなポリニャック嬢らだ。
しかし、かの有名な軍人フェルゼンに対しては、疑いもなく感謝の念は
抱いていたが、愛と思えるものは何もなかったようだとミシュレは言う。

資料や古書を読み解き、正確な史実を記そうとしていたミシュレでさえ
このように誤魔化されていたわけですね。実在フェルゼンの慎重さ巧妙さに。

フランスでの原著は全17巻、こちらはその終盤3巻分の抄訳ということで
デュバリー夫人や首飾り事件について訳されていない章がありました。
ベルばらFANとしては、その辺りも読んでみたかったですわ~。

マリー・アントワネットの評伝を書いたツヴァイクは、ロアンと王妃の関係を
低く見積もり、これをラモット夫人による詐欺事件として説明した
~略~
だがミシュレは、ツヴァイクが同郷のオーストリア人マリー・アントワネットに
そそいだのと同じだけの同情を、「詐欺師」とされて断罪された
ラ・ヴァロア(ジャンヌ・ラモット)にそそいでいる。
~略~
ツヴァイクがこの事件を人間の個人的な弱さのレベルに引き下げて
説明したのに対し、ミシュレはそれをアンシャン・レジームの
権力構造の中に位置づけて解釈し直したのである。


首飾り事件中の経緯については要約されてしまっていますが、その前後
ジャンヌ・バロア当人については、こちらに収録された訳分だけでも
他では見た事のない話が記されていて、なかなか面白かったです





つづく