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むか~しの雑誌。その2


先回のアンドレ&ベルナールの放送予告と同じ号に
三頁だけ掲載されていた、ベルばらプチ特集。
そちらから仮シナリオをピックアップ




《納屋の中》
干し草に埋もれて、じっとアンドレの顔をながめるオスカル。
頬にひとすじ涙のあと。
アンドレの指がオスカルの顔をまさぐる。

「なにが悲しい?」
「アンドレ…私は…私は生きて行こう…」
(微笑)
「私はお前の目になる… 命ある限り、これからはいつも一緒だ…」
「そうとも。命ある限り、俺のすべてはお前のものだ。なにもかも、お前にやろう。
 俺の愛、俺の夢、俺の力、俺のやさしさ----」

スックと立ち上がるオスカル
窓から差し込む日の光に白い左手をさしのべ、その指から指輪を引き抜く。

「今から私は身分を捨てよう…お前と同じ立場になる…」
「…なんだって⁉」
「私はもう貴族ではない…お前と同じ平民なのだ…」
「…オスカル!」

ひしとアンドレのからだにすがりつくオスカル

「ああ、アンドレ、アンドレ…私の愛する夫…」


 《パリ市中》 《ベルサイユ宮》 《衛兵隊宿舎》 《ベルナールの家》 他…と
次々に場面が移り、それぞれに眠る人々を描写。
再び《納屋》に戻り、寄り添い眠る二人に夜明けの光。そこへナレーション。



『運命の日、1789年7月13日は、こうして明けようとしていた。
この内の何人かは、明日の安らかな眠りを約束されてはいない。
歴史の怒涛は、いままさにこの人々をその渦の中にのみこもうとしていたのであった---』

CIMG9577a



矢印先が仮シナリオ部分。掲載といっても、この場面だけ。
なんとなく原作寄り…と感じるのは、最後の夫呼びのせいかしら。
この仮シナリオと、実際に放送したほたる場面のシナリオ。
果たして、どちらがお好み?

このプチ特集で紹介されている絵は、完成した画像で
寄せられたスタッフのコメントも、製作がいいとこ進んだ後らしき様子。
それがなぜか、同じく掲載されている、この場面のシナリオだけが
採用されずに終わった仮シナリオなのでした。不思議~~~??
普通なら決定稿を載せませんかネ?単なる手違い?
それとも何度も練ったという「こういうバージョンもありました」的紹介でしょか?

現在ならハードルは低く、これも可能と思いますが、本放送があった
昭和のこの頃は、世間一般の感覚 → 《アニメ=子供番組》。
なので、ほたる版より描き方の難易度が高かったかもしれませんねぇ





最後にひとつ、特集に寄せられていた中から
作画監督の荒木伸吾氏のコメントも。

~前略~
たしかに、全裸で抱きあうラブシーンはアニメーションでははじめてのことです。
しかし、絵づらとしては強烈なものではなくて、自然な流れのなかで描くことができました。
むしろ、結ばれるイメージを、オスカルとアンドレの心の流れを表現したものと解釈してください。
(アニメージュ1980年9月号)






むか~しの雑誌。
むか~しの雑誌。その1







ベルばらアニメ、1979年本放送時の番組案内。
この頃、掲載していた雑誌によっては、編集者ではなく
番組製作サイドの人が、文を寄せているものもありました。

その中からひとつ。 
=アンドレ 
=ベルナール
という会話仕立ての一部を。(アニメージュ1980年9月号)


~前略~
 『ベルばら』のような歴史ものは時代考証がたいへんらしいね
 ああ、資料不足、時間不足でスタッフのみなさんフーフーいってる
~略~
 それはわるいナ。でもほんとうはわざと嘘やっちゃうこともあるんだって?
 そうそう。ジュー・ド・ポームはほんとうは室内競技場なんだけど屋外にしてあるし、
   3色旗(フランス国旗)もまだできていなかったのに市民が振っている

 演出効果をねらってるんだネ。ところで次回はキミがレポーターだって聞いたけど?
 だって、きみは38話で撃たれちまうからさ
 ガーン!!
 まあまあ、37話でキミはオスカルとヌードで抱き合えるんだ。がまんしな
 そりゃ、ないぜ
 ということで次回はジャーナリストのオレがすばらしいレポートを
 ひどい!これこそ大嘘だ!


製作さん、舞台裏を絡めた案内という感じ。
文章担当は、東京ムービー・ベルばらアニメ文芸担当の本間氏。
こちらは第37・38話放送予告ためのミニ記事。

この当時の情報収集としては、ネットなど欠片もないのは当然のこと、関連書も
今ほど発行されていない中、物語の細々した設定を固めるための資料入手は
現在よりもはるかに大変だったと思います。
それでも実写映画など、先に作られた作品の情報を活用できた分だけ
池田先生が孤軍奮闘、頑張っていた頃よりはマシなのかなぁ~


CIMG9571
なんちゃってジュ・ド・ポーム







むか~しの雑誌。



TV番組の放送案内(予告)
昔の雑誌にも掲載されていますが、中には
仮タイトルで紹介されているものもあります。

いくつか拾って、正式なタイトルと並べてみました。

サブタイトル15-21

仮タイトル掲載時は、同時に紹介されている放送内容も
実際の放送とは、ストーリーが違っていたことがしばしばしば。
タイトルが定まっていないというのは、シナリオ自体が
まだまだ決定稿ではないタイミングだったのかしら

サブタイトル29-31

仮タイトルも、そんなに悪くない…と思っていたら
「女隊長大きらい!」とかネ
漫画版の若々しい衛兵隊諸君なら、こういうテイストもあり?
けどアニメ版の渋~い衛兵隊諸君では、ちょっと路線違いかな。
やはり決定稿の方が、ベストマッチでしっくりきます

サブタイトル35-38


 ●ダイジェスト● 
第38話運命の銃弾(仮)

 オスカルは、出発の前日、兵たちに九時間の自由時間を与えた。
もしかしたらそのまま帰ってこない兵がいるかもしれない、しかし
オスカルはその時は一人ででも出動する覚悟であった。
 アンドレもアランに自分も連れてってくれるよう必死に頼み込んだ。
しかし、アランは「その眼で連れて行くわけにはいかない」と
アンドレをなぐり気絶させて倉に閉じ込めてしまった。


 ●シナリオ紹介● 
第39話。アンドレが撃たれたあと。

震える手を指し伸ばす。
その指がやさしくオスカルに触れる。
「あ…お前の眼…」
「----------」
「…お前の鼻…お前の唇…」
「----------」
「ああ…青く澄みきった瞳…黄金色に輝く髪…俺には手にとるように見える」
重い瞼に閉じられたアンドレの眼
「アンドレッ…」
「俺の眼が見えなくなったのは、きっと神様が嫉妬したためさ…
美しいお前をあまりに瞶め過ぎたから…」
とかすかに微笑む

〈雑誌ジ・アニメS55.9掲載〉



第37話の仮シナリオ段階では、"眼の悪いアンドレは、パリへは
連れて行かない"と、オスカルさんは心に決めていました。
内容ダイジェストもシナリオも、完成版とは違う違う。
どちらかといえば原作漫画寄りに描かれていますね。
「美しいお前をあまりに瞶め(みつめ)過ぎたから…」
なーんて志垣さんの声を聴いたら、お尻もじもじものデスよ

ちゃんと完成品通りの番組案内を掲載していた雑誌もあるので
この辺りは、雑誌の編集タイミングの都合でしょうか?
今となっては、採用されなかった仮内容を楽しめるので
これはこれで美味しいですねぇ




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